囲繞地通行権と建築基準法上の接道義務

問題の所在

公道への通路のない土地(いわゆる囲繞地)には、民法上通行権(囲繞地通行権)が認められる。但し、上記通行権は、明確な契約等が存せず、その範囲・内容等が不明瞭なまま権利が行使されている場合が多い。

一方、建築基準法においては、建物の建築等にあたって、建築基準法上の道路に2m以上接していることが必要となる。

この中で、当該囲繞地上での建物建築等の際に、『囲繞地通行権に基づいて、建築基準法上の接道を確保できるか』が争われる場合がある。

価値判断

『囲繞地の所有者』としては、囲繞地通行権の範囲は広ければ広いほど好都合である。そして、建物の建築ができるか否かは、当然土地の価値にも大きな影響が出てくる。

一方、囲繞地通行権を広く認めることは、『通行される側の土地の所有者』にとっては、自身の土地利用権の侵害となる。

この中での調整の問題ではあるが、特に現況利用状態を拡充する方向での利用権の認定は、『囲繞地の所有者は土地を安価に購入しているはずである』ということも鑑みれば慎重に行う必要があるだろう。

判例の状況

この点について最高裁が昭和37年3月15日に「民法210条と建築基準法規とは、趣旨・目的の異なる無関係なもの(公法私法相違説)」として、囲繞地通行権の範囲を認定するにあたって建築基準法上の規定を一切を考慮しない判決を下した。

この結論に対しては批判もあり、下級審では、これに反して建築基準法上の接道義務を考慮した形の判決も相当数出された。つまり、上記最高裁判例の立場は、下級審に受け入れられているとは言い難い状況であった。

しかし最高裁は、平成11年7月13日に再び『公法私法相違説』に基づく価値判断を再確認する判決を下している。

補足とまとめ

かかる論点については、学説も紛糾している状況にある。

但し、平成11年判決以降、消極説(建築基準法上の規定を根拠に、囲繞地通行権の範囲を拡充する等に消極的な見解)を再評価するものも出てきている。

このような状況及も鑑みると、上記最高裁判例に反する主張は認められがたいものであろう。

但し、無用な争いを生じさせないためには、
・土地の分筆等では、建築基準法上の無道路地を作らないように行う
・囲繞地を購入する際には、通行権の範囲を事前に明確にしておく
等が必要であろう。

執筆:不動産鑑定士 碓井敬三
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