マンションの個別排水管は専有部分か共用部分か

『マンションの各住戸からの専用排水管(いわゆる横管・枝管)は、専有部分にあたるのか、共用部分にあたるのか』ということが、『水漏れ等が生じた際に誰が責任を負い、修理費用等を負担するのか?』という枠組みの中で問題となることが有る。

問題の所在

そもそもマンションは、専有部分・共用部分に分けられるが、実際には、この区別が困難な場合がある。

その中で以下の通り、専有部分とすることがなじむ価値判断・共用部分とすることがなじむ価値判断があり、これらが併存するから問題が生じる。

共用部分になじむ価値判断

  • 排水管は、(特に平時においては)区分所有者(各部屋の所有者)の占有意識が希薄であること
  • 維持・管理等については、マンション全体として行うことが現実的であり、また望ましいこと

専用部分になじむ価値判断

  • リフォーム等の際には、区分所有者が配管も含めて取り換える場合も多いこと
  • 区分使用者の使用法が悪い事に起因する損害を管理組合が負うとするのは不当であること

法律等の状況

マンション関係を規定する法律には『建物の区分所有等に関する法律』が存し、同時にマンション管理等に関する実務上の指針とも言えるものに、国土交通省の『マンション標準管理規約』が有る。

前者を管轄する法務省の立案担当者の見解では、「専有部分か共用部分かは、法律上明確に定められている。

但し、各部分の範囲を一義的に定めることは立法技術上不可能であることから、これについては解釈にゆだねるべきである。」というやや玉虫色とも言える見解をとった上で、解釈上専有部分にあたるとの立場をとっている。

後者については、縦管は共用部・横管は専有部分との態度を取っており、実務上はこの考え方が基本となっている。

判例の状況

これに対する判例であるが、下級審が上記に反して基本的に共用部としたところから、理論上・実務上の問題が生じた。

この中で、最高裁判例が平成12年3月21日に出たが、これも個別排水管は共用部に当たるとして、排水管の修繕費用は管理組合が負担するものとした。

但し、上記最高裁判例について、留意するべき点が2点有る。

まず1点目は、当該最高裁判例の舞台となったマンションが、特に近時においては珍しい『天井配管』の事例である点に有る。

『天井配管』とは、配管が自室の床下にある『床下配管』と異なり、配管が階下の天井裏にある配管方法をいう。このため、配管の維持・管理等は、自室から行い得ず、階下の部屋から行わなければならない。

次に2点目として、共用部の判断をするに当たって、
原審では以下の4つの基準を総合的に考慮して判断するとしており、
・排水管が設置された場所(空間)
・排水管の機能
・排水管に対する点検・清掃・修理等の管理の方法
・建物全体の排水との関連等
上記最高裁判決では、以下の2つの基準をもって判断を行っている点である。
・排水管の構造
・排水管の設置場所

以上に鑑みれば、判例としても個別配管=共用部という一義的な判断を示したものではなく、今後個別配管の排水管を専有部分とする判決が出る可能性も十分に存している。

かかる中での対応

上記の判例にかかわらず、実務的には『縦管は共用部・横管は専用部』という見解が一般的で、管理規約にもそのような定めが有る場合が多い。

これについては、「そもそも専用部か共用部かを管理規約で決められるのか?」という問題は生じるが、所有はともかく管理のあり方・費用負担等に関しては、規約で決めることは許容されると判断される(立法担当者の見解も同旨)。よってこれを明確に規定していくことにより、その後の争いは可及的に解消できるであろう。

以上より、現在の管理規約を再確認するとともに、もし規定がない場合には規約の改訂を行って同項目を盛り込むことが、紛争防止に資するものと判断される。

執筆:碓井敬三

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